自然や環境への影響は?

自然環境やその他生物に及ぼす影響などについて

農薬と同じ成分を使用している家庭用殺虫剤やシロアリ駆除剤は危険ではないでしょうか。

いずれも定められた使用方法を守ることにより安全性を確保することができます。

家庭およびその周辺で使用される殺虫剤などは、農薬取締法で規制されている農薬と違って、使用場面によって、表に示されるように異なる法律により規制されています。家庭の周辺で使用される殺虫剤も所管官庁に登録や製造承認の申請を行ない、その際、安全性の審査が行なわれています(一部は自主基準)。したがって、安全性の審査を受け、承認や登録を受けた殺虫剤は、農薬と同様に使い方を守れば安全性と効力が確保されるといえます。
(詳しくは、動画1-1「農薬とは」を参照)
具体的な法律と規制内容については以下をご覧ください。

家庭用殺虫剤注1は厚生労働省の「医薬品医療機器等法」(以下、薬機法)により、シロアリ剤や不快害虫用殺虫剤注2は経済産業省・厚生労働省・環境省の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下、化審法)により安全性の審査が行われています。また、特にシロアリ剤は、(公社)日本しろあり対策協会(以下、白対協)及び(公社)日本木材保存協会(以下、保存協会)の定めるルールに従い、安全性の審査が行われています。

家庭用殺虫剤などの法規制については、表1をご参照ください。

表1.家庭用殺虫剤などの法規制の仕組み

※スクロールにて全体をご確認いただけます。

分 類 対象害虫 法律や基準 剤型例(有効成分)
厚生労働省 医薬品 衛生害虫
カ、ハエ、ゴキブリ、ノミ、ナンキンムシ、イエダニ、シラミ、屋内塵性ダニ類
薬機法 家庭用
燻煙剤 エアゾール剤、粉剤(ピレスロイド、有機りん剤)
防疫用
乳剤、粉剤(有機りん剤)
医薬部外品(誘引殺虫剤を含む) 衛生害虫
カ、ハエ、ゴキブリ、ノミ、ナンキンムシ、イエダニ、シラミ、屋内塵性ダニ類
薬機法 家庭用
蚊取線香、電気蚊取、エアゾール剤(ピレスロイド)
防疫用 油剤、乳剤(ピレスロイド)
経済産業省
厚生労働省
環境省
化成品 不快害虫
クロアリ、シロアリ、ハチ、ブユ、ユスリカ、ケムシ、ムカデ、クモなど
衣料害虫、建築害虫
化審法
生活害虫防除剤協議会自主基準
エアゾール剤、粉剤(ピレスロイド、有機りん剤、カーバメート剤)
農林水産省 動物用医薬品または医薬部外品 動物外部寄生虫
犬や猫などの愛がん動物のノミ、畜鶏舎のハエ、カ、マダニなど
動物用医薬品等取締規則 蚊取線香、乳剤、粉剤(ピレスロイド、有機りん剤)
農薬 農業害虫
ウンカ・ヨコバイ類、ニカメイチュウ、カメムシ、ハダニ、サビダニ、ケムシ類など
農薬取締法 粒剤、液剤、乳剤、水和剤
  • (注1)家庭用殺虫剤
    薬機法に基づいて厚生労働省が所管する殺虫剤
    ハエ、蚊、ゴキブリ、ノミ、トコジラミ、イエダニ、屋内塵性ダニ類、シラミ等いわゆる衛生害虫を対象として殺虫剤の製造販売を申請する場合、薬機法に基づいた各種安全性資料が要求されます。特にスプレー式等の殺虫剤は吸入されるケースが多いことを想定し、急性吸入毒性、4週間以上毎日連続吸入の毒性試験、製品の実使用場面における有効成分等の気中濃度の測定が要求され、これらの試験にパスしなければ製造販売の承認が得られません。また、薬機法で承認された製品は、製品毎に用法及び用量も定められています。

  • (注2)シロアリ剤や不快害虫用殺虫剤
    化審法に基づいて経済産業省、厚生労働省及び環境省が所管する殺虫剤
    薬機法及び農薬取締法の対象となっていない害虫、例えばムカデ、クロアリ、ダンゴムシ等の不快害虫、シロアリ等の木材害虫及びイガ等の衣料害虫を駆除する殺虫剤や防虫剤が化審法の安全性評価の対象となります。化審法では、薬機法や農薬取締法とは別個に、人の健康や環境への影響を配慮した各種試験が要求されます。その結果、ある化学物質が難分解性であったり、高蓄積性であったり、人への長期毒性や動植物への生態毒性の疑いなどで、使用にあたって制限が必要となった場合、その物質の性状によって特定化学物質や監視化学物質に指定され、製造や輸入あるいは用途が制限されます。また、この法律で認められていない化学物質は製造や輸入ができないことになります。
    なお、シロアリ剤については、国土交通大臣の許可団体である白対協及び文部省が監督する木材保存に関する学会である木材保存協会が共同で(公財)日本住宅・木材技術センターに審査を委託しています。(財)日本住宅・木材技術センターでは、農薬と同等な安全性試験、環境への負荷試験などの結果や使用法、使用後の廃棄方法などを総合的に検討し、白対協及び保存協会がそれぞれ認定・登録・更新を行っています。その審査基準となる「木材保存剤等性能審査規程」には、作業者及び現場周辺環境、ならびに現場住居者に係る安全性を図るために空中濃度測定ガイドラインも示されて、安全性が事前に確認されています。

(2022年3月)