自然や環境への影響は?

自然環境やその他生物に及ぼす影響などについて

散布された農薬は土壌中にたまっていくのではないですか。

散布農薬は、土壌表面では太陽光などによって、また土壌中では微生物などによって分解されます。

農薬は土壌表面では太陽光などにより分解され、土壌中では、微生物の作用などにより分解されて、消失します。農薬登録にあたっては、実際にほ場に農薬を処理した後、経時的に土壌中における農薬の消失挙動を調べます。その試験結果から土壌中における半減期(土壌における最高濃度が半分にまで消失する期間)を算出しています。

ほ場における農薬の土壌中半減期が100日を超える場合は、散布後に栽培する作物中に吸収される農薬の量を評価するために、後作物残留試験が要求されます。その結果、土壌半減期が180日以上の場合は後作物への残留が人の健康を損なうおそれのない濃度量(0.01ppm)を超えないこと、土壌半減期が180日未満の場合は後作物への残留が農薬残留基準値を超えないこと、適用がない作物については人の健康を損なうおそれのない濃度量(0.01ppm)を超えないことで、その農薬の登録が認められます。

なお、何回も連続して農薬を使用した場合は、分解が追い付かず次第に蓄積していくのではないかと思われるかもしれませんが、これまでの研究では、土壌中の農薬量が処理した回数に比例して増加するのではなく、比較的すみやかに一定のレベルに落ち着くことがわかっています。例えば、土壌半減期が180日(0.5年)あるいは1年の農薬を仮に毎年1回ずつ複数年連続して処理した場合、下図に示すように土壌中における農薬の濃度はそれぞれ1回使用の場合の1.33倍あるいは2.0倍を超えることはないことがわかっています。

半減期の農薬を年1回施用した時の土壌中農薬濃度
参考文献
*鍬塚昭三、山本広基『土と農薬』1998、日本植物防疫協会
*日本農薬学会『農薬とは何か』1996、日本植物防疫協会
*金沢淳『農薬の環境科学』1992、合同出版
*食品安全委員会農薬専門調査会『残留農薬に係る農薬登録保留基準の見直し』2005年4月28日

(2022年3月)