自然や環境への影響は?

自然環境やその他生物に及ぼす影響などについて

環境中の生物に対する農薬の影響は、どのように配慮されているのですか。

農薬の登録申請には、生活環境動植物(魚類、甲殻類、藻類、鳥類)、および有用昆虫(ミツバチ、カイコなど)に対する影響を評価するための試験成績の提出が必要であり、審査の結果、環境中の生物に対する安全性が確認されたもののみが登録されることとなります。

農薬は生活環境動植物に対する安全性が確認されています。農薬の登録申請に際し、鳥類や、ミツバチ、カイコなど有用生物に対する影響を評価するための試験成績、及び魚類、甲殻類および藻類などを用いた水域の生活環境動植物に対する影響を評価するための試験成績の提出が必要です。これらの試験結果を評価し、農薬の容器・包装のラベルには使用時に守るべき事項が決められ、使用者はこれらの注意事項に沿って使用することが求められています。

ホタルやトンボ、メダカなどの姿を目にすることが少なくなったのは農薬による影響だとよく言われます。しかし、最も大きな原因は、工場や住宅地の造成、あるいは河川や用水路がコンクリート張りになったり暗渠になったりしたこと、また私たちの生活が便利になるにつれ農村部でもさまざまな物質が混ざった生活排水が流されるようになったこと、これらにより生物の生息環境が狭まったり悪化したりしたためと考えられます。一方、農薬が川や沼などに直接散布されたり、間違った使い方により水系に大量に流れ込んだりすれば、生態系に影響を与えることも考えられます。このため、2018年に改正された農薬取締法にもとづく農薬使用基準では、農薬の使用者には、生活環境動植物に被害が発生したり著しい影響を与えたりすることのない使い方や、公共用水域の水質汚濁を発生させ、それにより生活環境に悪影響が及ぶことがないような使い方をする責任のあることが、明確に示されています。

  • (注)農薬取締法では、平成17年4月より、水産動植物への影響を防止するための対策として、農薬の流出、あるいは飛散した場合に予測される公共水域の濃度と、その農薬の水産動植物に対する毒性を比較して、必要に応じて農薬の使用を規制することになりました。
    また、平成18年8月より、すべての農薬について、水質汚濁によって人に対する健康被害を防止するための対策として、一定の環境モデルの下で農薬を散布し、公共水域に流出、あるいは飛散した場合の環境中での予測濃度と人に対する影響を考慮した基準値を超える場合には農薬の使用を規制することになりました。
参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*松中昭一『農薬のおはなし』2000、日本規格協会
*杉本達芳『残留農薬のここが知りたいQ&A』1995、日本食品衛生協会
*化学工業日報社『農薬の話ウソ・ホント』1989
*暮らしの手帳、2002年10・11月号、p.80-p83
本山直樹「メダカが減ったのは農薬よりもむしろ水路のせい」

(2022年3月)