そのまま食べても大丈夫?

残留農薬や食品における安全基準などについて

私たちは実際のところ、どのくらいの量の農薬を体に取り入れているのですか。

推定される平均一日摂取量(μg/人/日)の対ADI(許容一日摂取量)比(%)は0.009%~2.80%の範囲であり、国民が一生涯に渡って毎日摂取したとしても健康に影響を生じるおそれはないものと考えられています。

この疑問に答えるためには、厚生労働省から公表されている各年次の「食品中の残留農薬の一日摂取量調査結果」が参考になります。

この調査は、マーケットバスケット方式といわれる方法で、日本人一日当りの食事(飲料水を含む)に含まれる農薬の残留量を調べるもので、平成3年度(1991年)に最初の調査が実施されて以来、毎年調査が行われています。令和元年度食品中の残留農薬の一日摂取量結果において次のように考察されています。

(引用文)

(1)いずれかの地域においていずれかの食品群で検出された農薬等 

『該当する農薬等並びに当該農薬等の推定された平均一日摂取量(μg/人/日)及び対ADI比(%)を別表1に示す。推定された対ADI比は0.0001~9.66%であり、国民が一生涯に渡って毎日摂取したとしても健康に影響を生じるおそれはないものと考えられる。』

農薬が分析された事例について要約すると、食品(洗浄、調理済のもの)から農薬成分が検出される場合は稀でした。また、農薬成分が検出された場合の一日摂取量(推定値)は、農薬成分のADIをかなり下回っていました。これら二つのことから、私たちが一日の食事から摂取している農薬の量はADIに比べてはるかに小さいと考えることができます。

どんな調査が実施されているの?

「一日摂取量調査」(トータルダイエット調査とも言う)は、国民が日常の食事を介して食品や飲料水に残留する農薬をどの程度摂取しているかを把握することを目的に行われるもので、毎年、各地域の県や市の衛生研究所等の協力を得て実施しているものです。調査の実施方法には、「マーケットバスケット方式」と「陰膳方式」*1という2つの方式がありますが、わが国の農薬の調査には前者が用いられています。この方式では、一日の平均的なモデル献立が分析対象となるため、国民の平均的な摂取量について推定することができます。また、モデル献立では食品群がバランスよく割り付けられているため、農薬が検出された場合にはどの食品群に残留していたかが確認でき、リスク管理措置(農薬使用基準など)の有効性を検証できることでも適しています。

マーケットバスケット方式の実施方法

  1. 国民栄養調査の分類を参考に食品を14種類の食品群(穀類、魚介類、肉類と卵類、飲料水など)に分類して、各群の中から代表的な食品を複数選び市場から購入します。

  2. 食品群毎に食品を摂取量比に応じて分取して、調理を必要とする食品については通常行われている調理方法に準じて調理をしてから粉砕混合します。

  3. 食品群毎のサンプルについて調査対象農薬を分析します。実際に農薬が検出された食品群では分析結果にその食品群の平均的な1日当たりの消費量を乗じて、その食品群での調査対象農薬の1日摂取量を求めます。農薬が検出されなかった食品群については、それぞれの農薬の検出限界の20%が残留していると仮定します。そのうえで全食品群の残留量を足し合わせた量を調査対象農薬の「平均1日摂取量」とします。

参考文献
*令和元年度 食品中の残留農薬等の一日摂取量調査結果について(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000168951.pdf
*厚生労働省HP>食品中の残留農薬等
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/index.html
*トータルダイエットスタディに関するガイドライン(農林水産省HP)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/tds/

(2022年3月)