教えて!農薬Q&A

そのまま食べても大丈夫?

残留農薬や食品における安全基準などについて

Q. 食べ物の安全性について、リスク評価、リスク管理など、リスクという言葉がよく使われます。どういう意味ですか。

 リスクとは危険性や危険度を示す尺度で、人や環境に対する望ましくない結果の起こる可能性とその程度をいいます。

 リスクとは危険性や危険度を示す尺度で、人や環境に対する望ましくない結果の起こる可能性とその程度をいいます。リスクは有害な要因(ハザード)の大きさや程度と悪影響が発生する確率によって判断・評価されます。

 リスク(Risk)に合致する日本語がないため、そのまま「リスク」という言葉が用いられています。リスクは危険なことがあるかも知れないというニュアンスです。例えば、新しいことを始めるとき “リスクを乗り越えチャレンジしよう”とか、金融商品では、“為替リスクを想定する”のような使われ方をします。リスク=危険という意味ではありません。危険はDangerという言葉になります。

 人の健康や環境に対する悪影響の可能性があるとき、その発生を防止し、低減するためにリスクアナリシス(分析)の手法が取られます。この手法には以下の 3つの要素(①リスク評価、②リスク管理、③リスクコミュニケーション)から成り立っています。まず、ハザード(有害性)の大きさ(食べ物に残留している農薬の毒性など)と、暴露量(食べる量)の科学的要素から、リスク(その影響が現実のものとなる可能性)の大きさが評価されます。これを「リスク評価」と言います。次いでリスクを許容レベル以下にするため適切な政策・措置を決定、実施する「リスク管理」が行われます。更に、リスクの特性やその影響に関する知識を深め、リスク評価・管理を有効に機能させるため、リスク評価、リスク管理双方の関係機関、消費者、生産者、流通事業者など関係者が、それぞれの立場から相互に意見を交換する「リスクコミュニケーション」が行われます。これら一連の工程がリスクアナリシスを構成します。

 “リスク評価”は科学者が、“リスク管理”は行政や生産・流通業者が中心になって行い、食品の安全性を確保しますが、消費者が安心を得るためには情報を得るだけでなく、意見を述べ、要望を伝えるなど、これらの取り組みに積極的に参加することが大切です。消費者だけでなく、生産者や流通業者など多くの人がリスク評価やリスク管理によって影響を受けることもあるので、これら関係者の間で十分な意見交換を行い、目標実現に協力し、最も適切な対応が図られるようにすることが「リスクコミュニケーション」の目的とされています。

リスクアナリシス

■ 許容するリスクの程度
 許容するリスクの程度についてはさまざまな考え方、つまりリスク管理原則があります。たとえば、ある化学物質に触れた10人のうち1人はがんで死亡する、あるいは100人のうち1人という場合は普通の生活環境から当然排除することになりますが、100万人のうち1人なら、そのリスクは自然発がんの発生率以下であることから、無視、ゼロに相当すると扱う考え方があります。一定のリスクがあってもそれに見合う利益があるという場合、あるいはそのリスクをやみくもにゼロに近づけようとすると膨大な費用がかかったり、社会全体として不利益になったりしても、その化学物質や技術などを認めるという考え方です。
■ 社会全体のリスクを小さくする
 このようなリスクという考え方は、アメリカでは最初、放射性物質の危険性評価に使われ、発がんのメカニズムが解明されるようになるとともに、発がん物質の危険性に対応する方法として発達してきたといわれます。現在では、発がん物質だけでなくさまざまなリスクに応用されるようになりました。また、現実の社会ではさまざまなリスクが存在し、その裏にはベネフィット(便益性)があります。なぜなら、ベネフィットのないリスクはただちに排除されてしまうからです。したがって、これまでのように、絶対安全だけを要求するとそのリスクがもつベネフィットがなくなるだけでなく、他のリスクが増大することさえあります。このような多くのリスクを調整し、社会全体としてリスクを小さくするための手法としても、リスクの考え方がとられるようになっています。
■ リスクと基準値の関係
 日常生活の中で食べ物の安全性が語られる場合、安全か危険かの二分法で行われがちです。食品の場合、基準値(位置は規則の適合・健康被害無しの境界)以下か否か、賞味期限以内かそうでないかという「規則上の基準」で判断されていることがあります。しかし、食品中の残留農薬の基準値、毒性試験から得られた最大無毒性量(図2では安全(位置は不確実領域と危険・やや危険の境界)という「数値」に百分の一の安全係数という要素を予め掛け、かなりの余裕をもって規則上の基準が設定されています。「規則上の基準」を超えたからといって、直ちに「実質的な危険」が現れるわけでもありません。
図2. リスクの考え方 安全・安心の観点から
リスクの考え方 安全・安心の観点から
参考文献
*大矢勝『石鹸安全信仰の幻』2002、文芸春秋
*中西準子『環境リスク論』1995、岩波書店
*中西準子『水の環境戦略』1994、岩波書店
* 食品安全委員会 2008年HP リスク評価
* 食品に関するリスクコミュニケーション~農薬のリスクアナリシスに関する意見交換(’06/02/12)

(2017年3月)

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