そのまま食べても大丈夫?

残留農薬や食品における安全基準などについて

農薬が残留した食品を食べた影響が、将来産まれる子供や、さらに孫に影響を及ぼすことはありませんか。

食品に残留した農薬を両親あるいは妊婦が摂取したとしても、産まれてくる子孫に影響を及ぼすことはありません

農薬の登録の際に必要な動物試験として、妊娠動物が農薬の暴露を受けた場合に胎児への影響がないかについて調べられています。(催奇形性試験)

また、親世代への暴露による影響が生殖に関係して、妊娠、出産などに、そして子世代になにか有害な影響を及ぼさないか、またその次の孫の世代はどうかについても、三世代にわたり調べられています。(繁殖毒性試験)

これらの催奇形性試験と繁殖毒性試験から得られたNOAEL(無毒性量)などに関する知見は、ADI(許容一日摂取量)の設定に反映されています。

母親から胎児への影響~催奇形性試験

妊娠中、母親と胎児は胎盤で繋がっています。しかし、母親と胎児の血管が直接につながっているわけではなく、胎児側の老廃物などと母体側の酸素や栄養分などは、胎盤のフィルターを通して交換される仕組みになっています。しかし、母親に妊娠中の飲酒や喫煙があると、アルコールやニコチンなどはフィルターを通過し、胎児に障害を与える恐れがあることが知られています。

農薬については、妊娠中の母親の農薬摂取が母体および胎児に対して影響を及ぼさないか調べるため「催奇形性試験」が、2種類の動物(通常、ラットとウサギ)を用いて実施されています。投与量は、無毒性量が推定できるように少なくとも3段階とし、投与期間は、少なくとも着床から分娩予定日の前々日までとされています。検査の内容は、投与期間中に母動物の一般状態が観察されるほか、動物は、早産や流産、死亡などがあった場合には速やかに、また、分娩予定日の前日には、すべての動物が解剖され母動物と胎児への影響が詳しく調べられます。

生殖・繁殖に及ぼす影響~繁殖毒性試験

農薬については、ラットを用いた「繁殖毒性試験」が実施されています。この試験は、農薬の摂取が交尾、妊娠、出産などの生殖機能や出生児の生育などに影響を及ぼさないかを調べることを目的に行われます。投与は第一世代(親世代:P)と第二世代(子世代:F1)の2世代に渡って行われ、第三世代(孫世代:F2)が離乳するまで検査が行われます。投与量は、無毒性量が推定できるように少なくとも3段階とされ、投与期間はPおよびF1で、交尾するまで10週間以上、その後、雄は交配終了まで、雌は児動物が離乳するまでとされています。検査内容については、生殖器系の器官などの病理組織学的検査が行われるほか、繁殖行動や出産・哺育に関するデータなどが取られます。

参考
*農林水産消費安全技術センター>農薬>農薬登録申請
「農薬の登録申請において提出すべき資料について(平成31年3月29日付け30消安第6278号農林水産省消費・安全局長通知)」
http://www.acis.famic.go.jp/shinsei/

(2022年3月)