農薬情報局

農薬ゼミおさらい講座

読めばナットクだらけ・人気講座レポート

お母さんたちに知ってほしい 知ってるようで知らない、農薬の話
今回のお話は、この方たちと。
  • 宮川 恒 先生の写真
    【パネリスト】
    京都大学農学研究科長
    教授
    農学博士
    宮川 恒 先生
  • 眞鍋 昇 先生の写真
    【パネリスト】
    東京大学
    農学生命科学研究科教授
    農学博士
    眞鍋 昇 先生
  • 牧田 弘満 さんの写真
    【生産者】
    牧田 弘満 さん
  • 札幌コンベンションセンター「中ホール」
    【会場】
    札幌コンベンションセンター
    「中ホール」

【司会】 フリーアナウンサー 松田 朋恵 さん

講座プログラム
  • 開催日時:2013年10月24日(木) 13:00〜15:30
  • 第一部:「農薬とは何?」(解説者:宮川 恒 先生)
  • 第二部:「農薬の安全性」(解説者:眞鍋 昇 先生)
  • 参加者:265名
第一部

今回は応募者が多く抽選となり、ご来場いただけなかった方が多数いらっしゃいました。みなさんの農薬に対する意識の高さが伝わります。第一部は宮川先生に農薬の種類と役割、そして製造販売の厳重な管理についてお話いただきました。

  • 農薬の種類について。
    農薬は農薬取締法の中で「農作物を害する病害虫、雑草などを防除して作物を保護し、あるいは作物の成長を調整して農業の生産性を高めるために使用する薬剤」と定義付けられています。では、いったいどのような種類があるのでしょうか? まずは害虫を駆除する殺虫剤。これは虫の神経に作用して麻痺させるタイプが主流となり、その他にもホルモンのバランスを崩して虫を成長させないもの、消化管に作用して栄養を摂取できなくするものなど、さまざまな種類があります。続いて殺菌剤。これは植物の病原となるカビやバクテリアが栄養を摂取できなくするもの、細胞分裂をできなくするもの、さらに植物への感染を防ぐものなどがあります。そして除草剤。これは雑草の光合成を邪魔したり、成長ホルモンをかく乱させたり、いろいろな方法で雑草を枯らします。その他にも成長促進剤などあり、作物の成長を守るものは天敵昆虫や性フェロモン剤を含め、すべて「農薬」とされます。
  • 会場の様子(第一部)
生産性を高めるための農薬の役割について。

作物の生産性を高める農薬。それではこれを使用しなかったら、はたして収穫量はどの程度変わるのでしょう。(一社)日本植物防疫協会が1990年から2006年に農薬を使用しないで栽培した場合、収量と出荷金額にどのような影響が出るかを調べる試験を行いました。その結果、お米の出荷量では20~30%減、りんごに至っては出荷できるものはほぼ皆無でした。また二年連続で無農薬栽培をするとりんごの木自体が枯れてしまうケースも見られました。作物の種類によって、お米、あるいはキャベツ、またりんごなどの果物と、それぞれ程度はちがいますが、いずれも作物を作って市場に流していこうとする場合には、守ってあげなければいけません。そして守るためには農薬を正しく、安全に使っていかなければいけません。

厳重な農薬の登録。

農薬を製造して販売するためには「登録」と呼ばれる許可を取らなければなりません。登録にはこれまで行った実験結果により、作物や人、環境に影響のないことが立証され、かつその実験経過がまとめられた書類を一式、農林水産省に届け出ます。農林水産省は、その資料を精査し、次は厚生労働省に提出し、さらに精査を行います。そして環境についての影響などは環境省が綿密に調べます。これら厳格な審査をパスしたものだけが農薬として登録され、製造販売を行えるようになります。そしてラベルに記載される登録番号が発行され、用途、農薬名、有効成分を記載し販売が可能となります。15項目の安全試験、そしてその後省庁による検証などを重ね、厳重な管理体制のもとで安全・安心な農薬の開発が行われているのです。

第二部

第二部は眞鍋先生による、農薬の安全性や残留農薬といった核心に迫るお話です。さらに実際どのように農薬が使用されているのか、生産者である牧田さんにご登場いただき、現状を語っていただきました。

  • 農薬の安全性。
    農薬の安全性試験の目的は、「作物に対する安全性」「使用者への安全性」「消費者への安全性」「環境への安全性」の4つの安全を担保するために行われます。どれもが重要なことですが、もっとも大切なのはやはり消費者への安全性です。このことについて注目されるのは、消費者が口にする農作物の残留農薬の問題。理想的には残留農薬が0(ゼロ)の状態が望ましく、最近では限りなくこれに近づけるさまざまな研究や改良が施されていますが、仮に農薬が体内に入ったとしても速やかに体内で分解され排泄されるものでないと、農薬として登録はできません。実は農薬の安全規定は医薬品よりも厳しいものが用いられているのです。また本来、野菜や植物には、食べられることなく生き残るために、自分自身で毒物を生成する能力があります。この野菜本来の毒性に比べて、現在日本国内で登録され、使用を許可されている農薬の毒性は、低いレベルとなっています。
  • 会場の様子1(第二部)
すでに残留農薬は昔のイメージ。
大量の農薬を散布しているイメージは、もはやはるか昔のイメージです。現在では非常に少ない量で、的確に効果を得られるように進歩しています。また人間の体の中で分解されるだけではなく、作物の内部や環境の中でも速やかに分解されるので、蓄積されるようなことはありません。例えば付着した農薬は太陽光によって分解されたり、蒸発または雨に流されるなど、3~10日間で急速に減少します。表皮や根から吸収された農薬も、作物自身が持つ酵素によって分解されたり、作物の成長によっても薄められていきます。現在登録されている農薬をラベルに従い正しく使用する限り、残留農薬の問題はまったくないと言えるでしょう。
環境への安全性。

環境への安全性は、ひと昔前まではあまり考えられていませんでした。約40年前に「緑の革命」といわれ、化学肥料や農薬をたくさん使い、お米の生産量が劇的に増えた時代がありました。大量の農薬が使用されましたが、その結果、害虫を駆除する「天敵」もいなくなり、さらにはタニシや鳥類にいたるまで、あらゆる生物に影響を及ぼしました。その教訓を生かして、現在では散布された農薬がミツバチやカイコなどの有用昆虫にどのように影響するのか、また川や沼などに生息する、鯉やミジンコ、藻類に対して影響するのか、さらに鳥類にも経口投与による試験が行われ、その結果から、農薬を使う際に守るべき注意事項や使用方法を細かく決めたうえで、農薬として登録されるようになっています。ターゲットとなる害虫や病原菌などを確実に駆除し、その他の部分には極力影響のない環境を保ちながら持続性のある農業を担保するために研究開発されているのです。

  • 生産者・牧田さんの話

    安平町で主に小麦、大豆、小豆、ビート、スイートコーンなどを栽培しています。今年の作付面積は81haで、北海道の平均耕作面積が約20haといわれているので、そこから比較すると大規模農家になります。みなさん農薬の使用について気になさると思いますが、我々農家には作物ごとに農薬の散布状況を日誌にまとめ、出荷先となる農協に提出することが義務づけられています。トレーサビリティの観点から、それらの記録物は農協が管理しており、仲買からお店、そしてみなさんの手に農作物が届くまでの流通の中で農薬使用の履歴を知りたい場合には、農協に問い合わせるとすべてが分かるようになっています。また農薬の散布方法も飛躍的に進歩し、環境配慮の観点から現在ではなるべく飛散しないスプレイヤーでの散布が主流となっています。農薬を使用する我々農家でも徹底した管理によって、正しく安全に使用しています。

  • 会場の様子2(第二部)
まとめ

最後に本日のまとめとして、宮川先生からお話がありました。

  • 食の安全・安心を考えるうえでの3つのポイント

    まず1つ目は、食の安全・安心は食べるものが十分にあって初めて議論できるということ。これは健康な生活を送るうえでとても大事なことです。いま世界では人口が増えて70億人に達しており、今後ますます増えていきます。我々はこの70億人が食べていけるだけの量を、効率よく生産していかなければなりません。農薬はそのための道具のひとつだということを、ご理解いただきたいと思います。そして2つ目は、リスクという考え方。あるものが私たちに危害を加える可能性があるかどうかではなく、それが実際に私たちにどれくらいの影響を与えているのかで判断しましょう。農薬は安全性に関する研究が進み、取り扱いにも十分な注意が払われているため、実はそのリスクは私たちの身の回りにあるアルコールやタバコなどに比べて小さくなっています。そして3つ目は、身の回りにあるものそれぞれがどの程度危険なのかを正しい情報に基づいて理解してほしいということです。農薬に関していちばん情報を持っているのは行政機関です。正しい情報をもとに、心と頭をやわらかくして、農薬とご自身の生活との関わりを考えていただきたいと思います。

  • イベント資料

こんな質問がありました。

「奇跡のリンゴ」のように、無農薬りんごを作れるのであれば、野菜も可能なのではないでしょうか? <50代女性>
  • おっしゃるとおり可能です。ただし病害虫の影響で収穫できる量は著しく減ってしまいます。また無事に収穫ができたとしても、食べ物としての品質は劣化します。虫を手で排除したり、葉物の虫食い部分はむしればよいのですが、それはとても手間ひまのかかることであり、最終的には価格にも反映されてしまいます。供給できる量という観点に立つと非常に難しいと言えるでしょう。一方で、適正に使用した場合、実際には収穫された農作物にほとんど農薬は検出されません。消費者にとっては「無農薬」と実質的に同じなのです。  
  • 宮川先生の写真(小)
    宮川先生
スーパーで買うニンジンは香りがありませんが、自分の畑で農薬を使わずに作ったニンジンには香りがあります。なぜでしょうか? <60代女性>
  • 農家の方が朝採り野菜を売っているファーマーズマーケットのニンジンを食べてみると、やはり香りがします。スーパーなどはどうしても店頭に並ぶまでに時間がかかります。香りに関しては鮮度が深く関係しており、農薬の問題ではないと思います。
  • 眞鍋先生の写真(小)
    眞鍋先生
農家の方は農協に出荷する作物には農薬を使いますが、自家用には使わないというのは本当でしょうか? <60代女性>
  • 結論からいうと本当です。理由は面倒だからです。自家用にほうれん草やキャベツ、ニンジンなど複数の野菜を畳一畳分の小さな畑で育てていますが、作物ごとに使用する農薬も違います。小さな畑なので自分で農薬を背負って撒くしかなく、10種類あったら10種類の農薬を撒くだけで半日かかってしまいます。自分たちが食べるなら虫に食われた部分を取り除けばいいですが、商品として考えるとキレイな状態でないと売り物になりません。

    うちの奥さんは、枝豆として食べる大豆には自分で農薬を撒いています。それは、枝豆のさやの中にウジムシのような虫がいることがあるからなんですよ。「ウジムシは栄養価が高くて、一緒に食べても身体に影響ないってテレビでやってたよ」と言っても「私は絶対イヤだ!」と(笑)
    農薬を使うか使わないかで作物の出来はまったく違います。農家として生活している以上、お金になるものとそうでないものとは手の掛け方は変わります。意識して自家用に農薬を撒かない農家さんもいるかもしれませんが、ほとんどの人は農薬が悪いからではなく、手間ひまをかけられないからだと思います。しかもうちの奥さんのように「これには使いたい!」というものには使いますからね(笑)
  • 牧田さんの写真(小)
    牧田さん
やはり農薬を使っている場合、野菜や果物はきれいに洗って使わないと体に影響が出るものでしょうか? <40代女性>
  • 影響は出ません。すでに収穫のときに農薬の残留基準値を下回っており、その基準値を超えたものは出荷できません。洗う、洗わないは本質的には関係がありません。ただしホコリやドロなど、衛生上で洗うことはおすすめします。
  • 宮川先生の写真(小)
    宮川先生
生産者として伝えたいこと

最後に生産者の代表として、牧田さんから力強いお言葉をいただきました。

農家は農薬の使用、管理を正しく厳しく行っています。
ぜひ安心して食べてください。
牧田さんの写真(小)牧田さん
  • 本日みなさまは抽選で入場されたとのことで、会場に入れなかった方も多くいると伺いました。それだけ農薬に対して、消費者の方々の関心が高いということを実感しました。生産者としてお話しすると、農薬に関して散布状況の記帳の義務化、正しい使用方法による運用、またそれに対する罰則も非常に厳しくなっております。それらはどの農家さんもしっかり守りながら農薬を使用していますので、ぜひ安心して食べていただきたいと思います。
参加者の感想
  • ・昔の農薬のイメージがあったので、今の安全性の高さにビックリしました。これからは安心して野菜や果物をおいしく食べられます。
    (60歳以上、女性、専業主婦)
  • ・農薬について悪いイメージがあったが考えが大分変わりました。
    (30代、女性、パート/アルバイト)
  • ・農薬に対する思い込みがいろいろありましたが、正しい知識を得ることができました。
    (60歳以上、女性、無職)
  • ・「農耕地は自然ではない」という言葉に目からウロコでした。
    (30代、女性、パート/アルバイト)
  • ・農薬は悪という思い違いが自分の中にすごくあったので、ためになった。
    (60歳以上、女性、専業主婦)
  • ・無農薬野菜という言葉をよく聞くので、農薬は体に悪いと思いこんでいました。それは誤解だと良く理解できました。
    (50代、女性、会社員)
  • ・専門家の先生の話を聞ける機会は普段ないので、わかりやすく説明して頂きよかったです。また、農家の方の話も直接聞けることがないので、両者の意見がわかり有効でした。
    (40代、女性、専業主婦)
  • ・農薬を作るには莫大な費用と何段階もの試験が必要ということにびっくり。
    (60歳以上、女性、専業主婦)
  • ・こういったゼミに参加して、知識が広がったことと、農薬に対する考え方が良い方へ変わりました。
    (50代、女性、専業主婦)
  • ・農薬は“毒”と理解していましたが、使用方法を守っていれば安全なことがわかり、見方が変わりました。
    (40代、女性、専業主婦)
  • ・思っていた以上に安心していろいろな物を食すると良いことが解りました。
    (60歳以上、女性、専業主婦)
  • ・食は誰もが必要としていること、その食を育てるのが農薬によって効率よくできるようになったと思います。こうしたゼミを大人だけでなく学生にも聞いてほしいと思いました。
    (40代、女性、パート/アルバイト)
  • ・あまり農薬に神経質にならずに料理等しようと思いました。
    (40代、女性、専業主婦)

今回のおみやげ 北海道の旬の味覚「じゃがいも・かぼちゃ・たまねぎ」

農薬ゼミ - よくある質問

農薬工業会では、消費者の皆さんに農薬のことを理解してもらうため「農薬ゼミ」などを開催しています。
そこでは毎回様々な質問が寄せられています。その中から、「よくある質問」についてお答えします。