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耐性リスク評価

FRACによる殺菌剤の耐性リスク評価方法を以下にご紹介します。このリスク評価は、新規殺菌剤の開発にあたって、耐性菌対策の必要性を判断する目的で作成されました。農業リスクを地域ごとに設定できるため、地域における耐性菌対策の必要性や優先順位を数値化することにも使用できます。

殺菌剤の耐性リスク
評価方法について

  1. はじめに
    Fungicide Resistance Action Committee(FRAC)は、過去の事例に基づいて評価される殺菌剤リスク、病原菌リスクおよび栽培リスクの3要素から算出する複合リスク値により、耐性菌の発生しやすさ(耐性リスク)を推定している。これによって、耐性菌対策の必要性を判断することができる。
  2. 複合リスクにもとづく耐性リスク評価

    (1)殺菌剤リスク
    過去の耐性菌の発生状況に基づいて、殺菌剤ごとに高~低リスクに分類している。それぞれの殺菌剤のリスクについては、FRACコード表に記載がある。

    表1 殺菌剤リスク

    (2)病原菌リスク
    これまでのところ特定の病原菌について耐性菌が出現するかどうかを実験室レベルで推定する手法はないので、FRACは病原菌ごとに過去の耐性菌発生状況に基づいて高~低リスクに分類している。

    表2 病原菌リスク

    (3)栽培リスク
    栽培地域の気象条件、栽培品種、栽培方法等の違いによる栽培地域の発病程度の差により、殺菌剤の散布回数は大きく異なる。これにより、耐性菌が発生するまでに要する期間は地域により異なる。各地域の過去の発病程度に基づいて、栽培リスクを高~低に分類する。

    (4)複合リスク値の算出
    殺菌剤、病原菌および栽培のリスクの3要素から構成する複合リスク値を図1に示す。殺菌剤リスク値と病原菌リスク値を乗じた後、さらに栽培リスク値を乗じて算出する。高リスク殺菌剤で高リスク病原菌を防除する組み合わせで、栽培リスクが高い場合に複合リスク値が最高(18)となる。

    図1 殺菌剤、病原菌および栽培リスクの基づく複合リスク値
  3. 耐性リスク評価を踏まえた耐性菌対策
    FRACは複合リスク値が6を越える場合に耐性菌対策の実施を推奨している。
    *使用回数(1年あたりまたは1作期あたり)を制限する。
    *使用時期を制限する(例:予防的に使用する)。
    *防除対象病害に対して有効な殺菌剤との混合剤または混用散布を検討する。
    *必ずローテーション散布する。
    *感受性モニタリングを実施して、耐性菌の発生状況を把握する。
引用文献
*FRAC code list 2019
*FRAC monograph 1 & 2
*FRAC Pathogen Risk List 2019

耐性リスク評価
(PDFデータ)