農薬情報局

教育関係者セミナーレポート

食と未来の教え方

食に関する今と未来を子どもたちに教える教育関係者向けのセミナーから、
授業のヒントや教育関係者として知っておきたい内容をピックアップしてお届けします。

栄養教諭・学校栄養職員及び(食育担当)教職員対象セミナー
食育を科学的に考える(東京)

2016年3月5日(土)

今回の講師は、この方たち
 
  • 【パネリスト】
    草深 由有子 先生
    クックパッド編集室
    編集長
    草深 由有子 先生
  • 【パネリスト】
    小島 正美 先生
    毎日新聞東京本社
    生活報道部編集委員
    小島 正美 先生
  • 【会場】
    トラストシティカンファレンス 丸の内
    トラストシティカンファレンス
    丸の内

【司会】 フリーアナウンサー・エッセイスト 小谷あゆみさん

講座プログラム
  • 第1部講演:「家庭と学校をつなぐ献立づくり」
  • 第2部講演:「誤解だらけの食情報」
  • ・開催日時:2016年3月5日(土)13:30~16:20
  • ・参加者:145名
第1部 家庭と学校をつなぐ献立づくり

講師:草深 由有子 先生

生活情報誌「サンキュ!」、食育料理雑誌「ボンメルシィ!」の編集、WEB開発を経て、2013年にクックパッド編集部に。2015年からクックパッド編集長に就任。クックパッドニュースをはじめ、サイトトップページのレシピ決定などクックパッド内の企画制作に携わる草深先生にお話を伺いました。

  • 検索データから見えるいまどきの食卓風景
    クックパッドは日本最大の料理レシピサイトです。月間利用者5576万人、投稿レシピ228万品。利用者の75%が女性で、20代後半~40代の子育て世代のお母さんがメインです。日々膨大なデータが集まってきますから、そのデータを分析すると「いまどきの食卓風景」が見えてきます。クックパッドはワード検索を使ってレシピを探します。1年を通して最も多く入力される検索ワードは「簡単」です。「サラダ×簡単」といった入力の仕方が最も多く、お母さんが時短・簡便に仕上がるレシピを強く求めていることがわかります。次いで多いのが「おいしい」「安い」の検索ワード。また旬の野菜や季節行事に関連した「ハロウィン」「おせち」「恵方巻き」「納豆の日」などのワードも検索が増加しています。旬の野菜や季節行事のことを子どもに教えたい、そんなお母さんの気持ちが見えてきます。クックパッドを使うお母さんは、料理や食を楽しむきっかけを探しています。その一方で「節約」の検索ワードが年々増加しており、これは世相を反映していると感じます。いまどきのお母さんが料理レシピに求めているのは、利便性、季節性、経済性ではないかと思います。
  • 会場の様子(第1部)
  • お母さんは子供の食事をどう考えている?
    「子ども」という検索ワードに注目すると、お母さんの心情が浮かび上ります。「子ども×○○○」という風に、子どもとセットで使われる言葉の上位は「お弁当」「野菜」「誕生日」の3つ。お母さんは、①子ども向けの料理が知りたい、②子どもに野菜を食べさせたい、③子どもにイベントを伝えたい、と考えているのです。ちなみにクックパッドの子ども向け人気NO.1レシピは、「お弁当︎☆子どもに◎揚げずに簡単♪チキン南蛮」です。簡単にできておいしいと2000人以上から大絶賛されました。とはいえ毎回人気レシピを作るわけにはいきません。お母さんが本当に望んでいるのは日々の献立づくりです。丼やパスタの単品では栄養バランスが良くないと知っています。でも多くのお母さんは「野菜たっぷり」の料理しか思い浮かばず、どう献立を考えればいいかわからないのです。クックパッドでは一汁二~三菜を基本として、主食、主菜、副菜、汁物の献立を具体的に紹介。炭水化物(黄)、たんぱく質(赤)、ビタミン・ミネラル(緑)の三色を食卓に出すことを推奨しています。手抜きでもバランスよく食べられるレシピ・・・そんなお母さんのニーズに応えられる情報をこれからも増やしたいと考えています。
  • 会場の様子(第1部)
  • 学校給食と家庭食の上手な連携とは?
    クックパッドは食育にも取組んでいます。食育とは=子どもたちの食への興味・関心・好奇心を育てることです。そこで夏休みの宿題「自由研究」を通して、子どもに料理体験をしてもらう「cookpad自由研究」を実施。話題の「おにぎらず」を作るなど、多くの子どもが参加する人気イベントになりました。また、学校給食と家庭の食事をつなぐ取組みとして、「給食のレシピを家庭に伝える」活動を始めました。実はいま、給食がブームなのです!給食ほどバランスのとれた食事はない、と全国のお母さんが再認識しているのです。クックパッドには全国13の自治体が「給食のページ」を開設しています。また給食の再現レシピをまとめた書籍が出版され目下ブレイク中です。今後、取組みたい食育のテーマもあります。それは不足している小・中学生の食事に関する情報の充実です。「運動している子どもの食事は?」「ダイエットとの付き合い方は?」といった情報はネットでも見つかりません。これらの情報を充実させることが、学校給食と家庭食の連携につながるのではないかと考えています。
  • 会場の様子(第1部)
第2部 『誤解だらけの食情報』-メディア情報の見極め方-

講師:小島 正美 先生

毎日新聞東京本社生活報道部編集委員であり、東京理科大学非常勤講師、内閣府食育推進会議委員、東京都食品安全審議会委員なども務める小島先生。食の安全や健康・医療問題を専門とする先生に、農薬や食品添加物に関するリスク情報との向き合い方についてお話いただきました。

  • 食品添加物は安全か?
    グルタミン酸ナトリウムをご存知ですか?味の素の成分の名前です。味の素を一振りすると、小さいトマト一個分のグルタミン酸が得られます。グルタミン酸は昆布、チーズ、魚、白菜などに含まれており、脳内など体にも存在する物質です。化学調味料だからといって否定する理由は何もありません。もう一つ例をあげると、大手メーカーのパンと家庭のパンを比較すると、早くカビが生える家庭のパンの方が安全という意見があります。大手メーカーのパンは食品添加物を使っている・・・と思いがちですが、家庭のパンに早くカビが生える理由は台所が雑菌だらけだからです。菌の増殖は初期の菌数が重要です。大手メーカーのパンにカビが生えにくいのは衛生管理が行き届いているからです。食品添加物には、たとえば「寿司を包む笹の葉」から得られる安息香酸のように、天然に存在する抗菌作用のある物質と同じ成分の化学物質もあります。これを使うことで食中毒の防止や消費期限の延長など保存に役立ちます。また廃棄ロスも減ります。食品添加物は、さまざまな動物実験を経て、生涯にわたって毎日摂取しても影響がない摂取許容量を定めて使われています。だから安心して利用できます。
  • 会場の様子(第2部)
  • 食のリスクとはなにか?
    例えば携帯電話を例にしてお話しましょう。携帯電話は1日10時間以上使うと、脳腫瘍になるリスクがあるというデータがあります。でもその理由で携帯電話を避ける人はいません。携帯を持つリスクより、便利さの方が大きいからです。リスクはリスクの大きさだけでは判断できません。人が考えるリスクは、心情的な面でも変わってきます。リスクを考えるときは同時にハザードという考え方も知っておくべきでしょう。どちらも「危ない」という意味ですが、本質が違います。たとえばライオンは凶暴な動物(ハザード大)だけど、檻に入っていれば(リスク小)安心という考え方です。ハザードとは「潜在的な危険」の意味です。マウスに大量の農薬や添加物を与えたら内臓障害を起こしたから、この農薬は危ない。これはリスクの話ではなくハザードの話です。食品添加物や残留農薬には潜在的な危険がありますが、摂取量を守り適正に管理すれば、リスクはほとんどありません。ハザードはコントロールできませんが、リスクは人の管理、制御で小さくできます。農薬だけでなくアルコールも、飛行機や新幹線に乗るリスクも同じことが言えるのです。
  • 会場の様子(第2部)
  • メディア情報の読み解き方
    どこの新聞社や放送局でも、記者の理解不足や勇み足によって間違った報道をすることがあります。週刊誌は危機感を煽る表現で部数を伸ばそうとする傾向があるし、テレビ局は広告スポンサーによるバイアスによって正しい情報が伝えられないケースも考えられます。信頼がおけるとされる公共放送でも間違った報道がないとは限りません。メディア情報とどう付き合っていけばいいかは、以下の5つにまとめられます。①複数のメディアから情報を得る、②公的機関の情報をチェックしておく、③報道の主体である記者や解説者が専門家かどうかを確認する(専門家の場合は、そのテーマを扱う専門家の中でどのグループ〈多数派?少数派?〉に属しているかも知っておきましょう)、④自分の意見と正反対の意見が書いてある本を読む(思考のバランスをニュートラルに保つためにも反対意見に目を通しましょう)、⑤自己の考え方の客観的チェックを怠らない(人は一度信じ込むと、自分に都合のいい情報ばかり追いかける傾向があります)。以上5つのポイントを実践して、メディア情報と上手に付き合い、日々の教育に生かしていただければと思います。
  • 会場の様子(第2部)
教育関係者の方々の関心は? ~質疑応答~

東北で生産された牛乳は飲まない、という生徒にどう対処すればいいですか?

質疑応答の様子
質疑応答の様子
原発事故の影響で東北産の食品がいまも汚染されていると考える方が一部にいます。事故後、全国で放射能の計測は継続されていますが、人体に影響のあるような数値はでていません。ただ、こういう生徒がいると、他の生徒へ影響しますから心配はよくわかります。私が出張講座をやりましょうか(笑)。保護者の方、生徒さん、みなさんが正しい情報が得られる機会を作ることが大切だと思います。
(小島先生)
私も小学生の母親なので、事故当時は戸惑いました。現在もこのような問題があると聞くと、食べる事の根本に立ち返る必要があるのではないかと思います。食べるとはただ栄養を摂るだけではなくて、食を楽しむことでもあります。食べ物にまつわる感謝とか生産者への敬意を、生徒や保護者の方と共有することも大切です。食育にもつながりますし、私たち日本人が今後、取組んでいかなければならないテーマだと思います。
(草深先生)

米やひじきに含まれているヒ素やカドミウムは問題がありますか?

日常生活の中で気にする必要はありません。米を主食としていないアメリカ人などは気にする傾向があるし、ひじきを食べる習慣のないイギリスでは実際にひじきは輸入禁止になっています。けれど米食は日本の食文化です。数千年の歴史を覆して改める必要はまったくないと思います。もし日本人に注意を促すとしたら、ひじきを毎日食べている人はたまに休んでみてはどうですか、といったレベルの話だと考えてください。
(小島先生)

原発汚染報道が、海外と国内で差があるのはなぜですか?

質疑応答の様子
日本政府が発表している数値は、間違いなく正確です。私も以前、韓国で日本が発表している数値は本当に正確か、と問われた経験があります。原発汚染の報道に関しては、海外から見るとやや感情的になる場合があっても不思議ではありません。一部の記者が偏った視点で記事を書くケースがあるかもしれません。いずれにしてもメディアの情報に関しては複数をチェックして、しっかり事実を確認することが大切です。
(小島先生)

クックパッドの、レシピの投稿ルールを教えてください。

クックパッドには毎日約3万件の投稿があります。投稿は一度公開されますが、専門部署のスタッフが1週間以内に全て目視チェックします。この段階で、食材や調理法が危険なものは非表示にします。またいわゆる「おばあちゃんの伝承レシピ」などは、言論の自由に基づき口コミ情報として公開しています。ただし編集部がメディアとして発信するときには、薬事法や厚生労働省のガイドラインに沿って編集しています。クックパッドでは、このように2段構えで情報を扱いながらWEBサイトを運営しています。
(草深先生)

クックパットが定義する簡単レシピとはどんなものですか?

食材数を重視しています。なるべく数が少なく、それでいて栄養バランスのいいレシピを「簡単レシピ」と捉えています。またその季節に安く、普通のスーパーで入手できることも大事。調味料はたとえばオイスターソースはOKで、粒マスタードはNGというふうに細かく基準を定めています。基本的には醤油、味噌、ケチャップ、マヨネーズ、めんつゆなど、どこの家庭にもある調味料で作れるものです。調理法は揚げるだけ、煮るだけといった1つの調理で事足りることがクックパッドの考える簡単レシピです。
(草深先生)

まとめ
  • 正しい食とは何かを考えるには、食の情報との接し方が重要だと思います。たとえば無農薬の食べ物の方が、農薬を使用したものより栄養価が高いという人がいます。確かにオーガニック食品と、農薬を使用した食べ物を比較すると栄養価に差はあると思います。けれど健康に差がでることはありません。これを裏付けるデータは、世界中の文献で確認することができます。一過性の情報を鵜呑みにすると事実を誤って認識することがあります。大事なのは、気になる食情報に接したら、偏見を持たずに、複数のメディアの情報にあたってみること。自分で正しいかどうかを判断できる経験知を磨くことだと思います。
    (小島先生)

    「食べることは楽しいこと」これがクックパッドのメッセージです。みんなが食べることを楽しんで、食べることに興味がある社会になれば、幸せな社会になるとクックパッドの社員は真剣に考えています。料理はともすれば毎日しなければならない面倒な労働です。その作業をテクノロジーの力でラクにしたい、楽しく調理ができるように変えていきたいと日々工夫しています。「流行っていることを楽しむ」「情報をシェアすることを楽しむ」、そんな食のうれしい体験をみんなが重ねることで、食べることの意味が広がり、もっと豊かな社会になると私たちは信じています。
    (草深先生)
  • まとめ
  • まとめ
  • まとめ
セミナーに参加して ~参加者の感想~
  • ・今、家庭が求めているもの。子供たちへ伝えていくべき情報の具体的なヒントをいただきました。
  • ・ハザードとリスクの考え方がわかり、ふだんの生活の中でものを見る目が深まりました。
  • ・初めて参加しましたが、テーマがとても面白く是非来年もお願いしたいです。
  • ・子供たちに食に関心をもたせ、自ら食に関わっていく力を育てること。それを目標に授業を作っていきたいと思いました。
  • ・お母さんたちが一汁三菜や、五大栄養素についての知識を毎日の食生活に活かせていない事実に驚きました。
  • ・小島先生のニュースは複数のメディアで比較することが大事。書き手のスタンスによって同じ情報でもニュアンスが違ってくるという話が印象的でした。
  • ・草深先生のお話で、保護者のニーズがどこにあるかが分かり、学校から発する情報が選びやすくなりました。
  • ・「添加物」に悪いイメージを持つ保護者が多いのですが、全ての食材や自然界にあるものには様々なリスクがあると改めて知り、授業をする上で指針ができました。
  • ・農薬より米・ヒジキのヒ素・カドミウムを気にするべきという話が印象に残りました。
  • ・学校では体験できない充実した時間でした。食に対する保護者の方の意識を知ることができ、またメディア情報の見方を学べました。