農薬情報局

防除の文明史

16.除草技術のあゆみ(4)昆虫による除草

近年、有害生物に対する生物的防除の研究が盛んになっている。そして害虫に対する天敵の実用化の事例が多いが、雑草を昆虫で駆除した著明な成功例も古くから存在する。代表例について紹介することにしたい。

ランタナの駆除
ランタナ(クマツヅラ科)は熱帯アメリカ原産の常緑小低木で、茎に小棘がある。1860年頃ハワイに輸入され、1900年頃には牧草地の数千エーカー(1 エーカー:約40アール)にはびこった。そこで1902年、原産地のメキシコからランタナを食害する昆虫23種をハワイに輸入した。そのうち8種が定着 し、とくにハマキガ(最有力)、ハモグリバエ、シジミチョウなどの幼虫がランタナの制圧に貢献した。
ウチワサボテンの駆除
ウチワサボテンは中南米原産で、葉がウチワ状に幅広く、刺のある大形のサボテンである。1840年頃、オーストラリアへの移住者が持ち込んだ1鉢が元で、 多くの人により広域に培養されるようになった。とくに牧場などの生け垣として利用されたものが逸出して、1910年には1000万エーカーに蔓延し、 1925年には6000万エーカーにおよんだ。これを駆除するため、カッター、ローラー、薬剤やガスなどが使われたが、効果が低く費用もかかり過ぎた。
そこでオーストラリア政府は1920年から、このサボテンを食害する昆虫を探索する要員をメキシコ、インド、南アフリカほかに派遣した。そして多くの種 類の昆虫がもたらされたが、抜群の駆除効果を示したのは、アルゼンチンから輸入したサボテンガ(メイガ科)であった(1925)。このガの幼虫は群生して 茎葉にもぐり込み、表皮を残して全部食べてしまう。その放飼地では、3年後にはサボテンを完全に制圧するという。
オーストラリアのクインズランド州ドルビーの町では、このサボテンガの功績を讃えて1965年に記念館を建て、大きな石碑にその由来を刻んでいる(カット参照)。
サボテンガの記念碑
サボテンガの記念碑
コゴメオトギリソウの駆除
コゴメオトギリソウ(オトギリソウ科)は世界に広く分布する多年草である。1900年頃、米国カリフォルニア州北部でも発見された。家畜が食べると有毒な 上に繁殖力が強く、放牧地の牧草を駆逐してしまう害草である。1944年には同州の被害面積は200万エーカーに達した。当時、オーストラリアでは、ヨー ロッパ原産のオトギリソウハムシ(甲虫)が、この害草をよく食べることが知られていたので、1949年、カリフォルニア大学のなどの研究により、このハム シの2群が放牧地2か所に放飼された。
結果は良好に推移し、1956年には同州全域にわたり、この害草は完全に撲滅された。それで1958年、同州フンボルト郡の関係団体等は、このハムシの記念碑を建立して、放飼の年月日、オーストラリアからの輸入に努力した研究者名などを刻銘した。