旬素材の産地から シャキシャキ夏セロリ 日本一の信州諏訪へ。

夏はビール!そしてビールには野菜スティック!この時期、食卓で大活躍するセロリの旬は夏。今回は、夏セロリの90%以上を栽培する信州諏訪を訪ねました。

種まきから収穫まで、セロリはとことん手がかかる。

先端まで刃になった収穫用包丁

野菜の中でも栽培が難しいと言われるセロリ。
苗を育てるハウスの前には、露地物の収穫まっさかりの畑が。
セロリ農家・永田さんの畑は、なんと5町歩(1町歩=約1ヘクタール)あるそうです。

セロリって鎌で収穫するんですね。

  • せつ子さん
    そう、ひと株ずつこうやってそーっと丁寧に収穫するとシャキシャキ感を壊さないんです。あとは中華包丁のような形をしているけど、背のギリギリまで刃になっているものも使いますよ。1シーズンに18万株、全部手作業です。

朝って、何時から収穫しているんですか?

  • せつ子さん
    今の時期は夜中の1時からかな。セロリは水分が重要だから、直射日光や高温に当たってしまうと食感や香りがダメになってしまいますからね。根元がギューッとしまって、軸が詰まっているのがいいセロリ。

株のセロリを初めて見ました…。やっぱり香りも強いですか?

これが門外不出の「諏訪3号」!

  • せつ子さん
    いや、このセロリは「諏訪3号」という諏訪独自の門外不出の品種(笑)。新コーネルという一般的な品種を改良したもので、香りがまろやかで食感もシャキシャキしているのにやわらかい。セロリが苦手な人にも食べやすいんです。

セロリは香りが強いから虫も寄ってこなさそうですね。

セロリのイラスト

  • 廣幸さん
    とんでもない!セロリはすごく虫がつきやすいし病気にもなりやすい野菜ですよ!栽培期間が長いから手もかかる上に、暑さも寒さも乾燥もダメ。

栽培期間ってどのくらいですか?

ハウスの中はこんな感じ

  • 廣幸さん
    夏場のホウレンソウだったら種まきから収穫まで30日くらいのところ、セロリはハウスで90日、そのあと畑で65日~75日育ててやっと収穫です。単純に計算しても5ヵ月以上はかかってるでしょ?虫や病気に弱いのにやり直しはできないんです。ハウスは二期作だけど露地は1年に1回の勝負ですよ。

重要なのはハウスでの温度管理と畑の土壌消毒。

わー、長い…

写真(上)研修生たちがポットへの植え替え作業を準備中、写真(下)育ったらポットから畑へ定植。

  • 廣幸さん
    ハウスでは苗から双葉が出たらピンセットでひとつひとつトレイに移し、30日たったらまたひとつひとつ樹脂のポットに移し替えて、さらに1ヵ月かけて20cmくらいまで育ててからやっと畑に植えるんです。

ハウスのあちこちに温度計が

聞いているだけで手間がかかりそうですね。

  • 廣幸さん
    ハウスではとにかく温度管理が重要ですね。セロリは寒さに弱いのでハウスの室温が15℃以下になるとトウが立って食べる部分の品質が落ちてしまうんです。だから苗を育てている下にはボイラーのお湯が回るパイプが張り巡らされているし、温風機で暖かい風も送っています。ハウスの中は常に春ですよ(笑)

ハモグリバエ対策

じゃあスクスクと育ちそう!ハウスなら虫も少ないでしょうし。

  • 廣幸さん
    いやいや、暖かいってことは菌が繁殖しやすいってことだから。若い苗が倒れるように枯れてしまう「立枯病」の病原菌は気温が上がると飛び始めるので、逆に菌が繁殖しやすい状態でもあります。しかも春になると虫も出てくるでしょ?だからほら、あんな紙でハモグリバエを獲ったり殺虫剤をまいたりします。ハモグリバエは幼虫が葉を食べてしまうので、産み付けられた卵から出てきた幼虫被害を粒剤などで防ぐんです。苗を寒さから守りながら外敵からも守らなきゃいけなくて大忙しですよ。

畑でも1ヵ月以上育てますよね?外のほうが大変そう…

水圧でスプリンクラーのように水まき

  • せつ子さん
    畑の段階になると、今度は暑さに弱いんです。この地域で作られるのも夏が涼しいから。しかもセロリは水がたっぷりないとよく育たないので乾燥もダメ。畑には深井戸からくみ上げた水をまくパイプがあって、1日10分程度、だいたい午後3時くらいにシャワーのように一斉にまくんです。
  • 廣幸さん
    でも湿気が多いと菌が繁殖するんでね。とにかく事前に土壌消毒を徹底します。ハウスにも菌を持ち込まないように、泥のついた靴では入らないようにしています。

土の消毒をするのはいつですか?

白いのがマルチ。藁も水分と温度を保つため

  • 廣幸さん
    まだハウスで苗を育てている4月です。マルチというシートを敷きながら同時に消毒もできる機械を使って。マルチをかけることで水分の蒸発を防げるし、日光が直接当たらないので雑草が生えるのも防げます。雑草は害虫の住みかですからね。

ひゃー、本当に手がかかる!箱入り娘ですね。

栽培日誌。使用した農薬はすべて記載

  • 廣幸さん
    うーん、どっちかっていうと「スラッとした美人」って感じかな。いいセロリのスッとした形もそうだけど、美人には虫が寄ってくるでしょ?(笑) 病気にも弱いから美人薄命。アブラムシヨトウムシナメクジ斑点病軟腐病…虫と病気から守るのに必死ですよ。農薬を使わないと無理ですね。今の農薬は分解されるのが早いですが、それでも収穫の何日前までに使わなければいけないと決まりがありますし、どの農薬をどのくらいの量使ったか、すべて記載する「栽培日誌」を提出しないとJAで受け付けてもらえません。何より生でこのおいしさを味わってほしいから、安心できる安全なセロリを作るのは農家にとっても当然です。

みずみずしい夏セロリは、ぜひ“マヨネーズ味噌”で!

今年の栽培は順調でした?

  • 廣幸さん
    そうだねぇ、今年は春先が暑かったり寒かったりと不安定だったでしょ?暖かい日が1週間続いたと思ったら急に寒くなって霜が降りそうな低温、たしか5月に-3℃くらいになったはず…。冷えないように苗にタオルをかけたりしたけど、枯れてしまった苗もあって大変でした。

ひと株ずつカルシウムを補給

畑に移してからは大丈夫でしたか?

  • 廣幸さん
    畑の時期は梅雨なのに雨が少なくて土が乾燥してしまって…。土が乾いて真っ白くなってマルチが敷けなかったですよ。雨が降ったときに急いで「今だ!」と敷きましたね。後半、雨が降って本当によかった!
  • せつ子さん
    梅雨明けしたらすごく暑くてね…。暑くなると肥料を吸収しなくなるからカルシウムが不足して「芯腐れ」が起きるんです。なので塩化カルシウムを水で溶いたものをひと株ひと株補給する作業を息子夫婦らが3人一列になってやってます。ほら、あんなふうにね。

セロリは野菜スティックやサラダのイメージが強いですが、地元ならではの食べ方ってありますか?

  • 廣幸さん
    いやぁ、もっぱら「マヨネーズ味噌」でバリバリ食べてるかな。「マヨネーズ味噌」はこの辺では定番だけど県外では知られていないみたいでね。混ぜるだけだから誰でもできる。葉に一番栄養があるので佃煮も地元料理かな。

味噌は辛口の「信州味噌」!

米粉のあっさり感とセロリが絶妙!

  • せつ子さん
    JAの女性部ではセロリを使ったレシピをいろいろ開発してますよ。これはセロリの米粉パウンドケーキ。真ん中に砂糖で煮たセロリがどーんと1本入ってるのがいいでしょ?

んーっ!マヨネーズ味噌、しょっぱさがちょうどいい!これはセロリが進みます(笑) パウンドケーキもハーブっぽくておいしい!

  • せつ子さん
    でしょ?でも、苦手じゃなければまずは生で味わってほしいですね。旬の露地セロリは本当にみずみずしくて、夏にぴったりですから!

今年の夏は「セロリとマヨネーズ味噌」がクセになりそうです!今日はありがとうございました。

  • セロリ 英名:celery セリ科 古代のエジプトや中世のローマ・ギリシャでは薬だったセロリ。独特の香りには、鎮静効果などたくさんの薬用効果があると言われています。ビタミンCが豊富なほか、ビタミンB、A、ミネラル、繊維質を多く含み、アメリカの国立がん研究所が提唱するガン予防効果の高い食品の重要度を分類した「デザイナーフード・リスト」ではトップ グループにもランクイン。
露地の夏セロリの旬は8月で、その90%以上が長野県諏訪産です。

    参考:JA長野県ホームページ

  • セロリ

永田さんの栽培スケジュール ※ハウスでは二期作で栽培・収穫

立枯病対策

軟腐病・斑点病・ハモグリバエ・ヨトウムシ対策

土壌消毒しながらマルチを準備

芽かきで整える。暑さ対策、病害虫対策、水分たっぷり

ひと株ひと株丁寧に鎌で収穫